真相の向こうに更なる真相が!/極夜の灰 サイモン・モックラー

和書レビュー
極夜の灰/サイモン・モックラー
おすすめ度5.0

ゲームクリエーター 小島秀夫監督が選ぶヒデミス2024に選ばれている「極夜の灰」サイモン・モックラー著を読みました。実は私、昔からゲームが好きで、特に小島秀夫さんの作るゲームを愛してやまないのですが、なぜかというと小島監督が作るゲームのストーリーがいつもドラマティックだから。(ゲームをプレイしながら泣いたのは、監督のゲームが初めてでした)「僕の体の70%は映画でできている」と話し、読書家でもある小島監督が選ぶ本なら間違いないだろう!と期待を胸に購入。

<あらすじ>
1967年末。精神科医のジャックは陸軍病院で、顔と両手を包帯で覆われた男と向かいあっていた。全身に重度の火傷を負ったその男は、グリーンランドの氷の下に作られた基地の唯一の生き残りである。基地の発電室で出火し、2名が死亡。重度の火傷を負って昏睡から目覚めたコナーは、唯一の生き残りで、何が起きたのか思いだせないという。同じ火災現場で発見された遺体は、一方はかろうじて人間の形を残していたが、もう一方は灰と骨と歯の塊だった。なぜ遺体の状態にこのような差が出たのか?CIAから依頼されたジャックはコナーとの対話と、過去の記録を元にその時基地で何が起こったのかを突き止めようとするが…

火災事故で2名が死に、1名が生き残った事件と、比較的シンプルな設定なのですが、読めば読むほど不思議な状況で、更に様々な思惑が入り乱れ、どんどん深みにはまっていきます。そして真相が明らかになった…と思ったら更に奥に更なる真相が現れたときには、「えっ!ちょっと待って、今まで読んでたこのお話は何だったの?!」とページをめくる手が止まらなくなりました。1960年代だからこそ通用するお話ではありますが、犯人の心理、ジャックの心理、どちらも丁寧に描かれていてすごく説得力がありました。

洋書を読むようになってから、翻訳ミステリーを読む機会が減っており、それはどうしても翻訳の違和感を感じてしまうのが理由だったりするのですが、この本の翻訳は自然で本当に読みやすかったです…!翻訳者の冨田ひろみさんの力量のすばらしさを感じました。

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