Twitterで非常に面白い洋書を教えてもらい、手に取ったこちらの本。
気軽に読み始めたら止まらず、数日で一気に読み上げてしまいました。
Z for Zachariahは1974年に発表された本で、著者であるRobert. C. O’Brienが亡くなった後、遺稿を元に妻と娘が発行した一冊。物語に古さはみじんも感じさせません。YA(ヤングアダルト)向け小説なので、辞書も頻繁に引く必要なく読めます。何よりストーリーはむしろ子供というより、大人向けなのではないかと思います。
<あらすじ>
核戦争で文明が崩壊した後、地理的に奇跡的に放射線被害を免れた谷の小村が舞台。唯一生き残った16歳の少女は、残された資源と家畜、農産物をやりくりしながら生きている。彼女は、ある日遠くから人影が近づいてくるのを発見する。焚火をしながらじわじわと近づいてくる人影…それは、放射線防護服で全身を覆った大人の男だった。一人になった後、初めて出会う人間。彼は一体どんな人物なのか、そして信じられるのか。
She realizes there may be worse things than being the last person on Earth.
(地球上でたった一人になるよりも恐ろしいことが有るということを、彼女は知る…)
カバーに書かれたこの文章がすべて物語っています。
外には放射線、安全なのは限られたスペースだけ、そして何よりも怖いのは「この人が信じられる人かどうか」ということ。結局人間が一番怖い…。
ハラハラドキドキはありますが、ホラーのような怖さはないので、怖いの苦手という人も問題なく読めると思います。(私も怖いのは苦手)
落としどころはどこなのか、どうやって終わらせるのこれ?と思いながら読んでいたのですが、もう本当に絶妙な終わり方で脱帽。最後のページまで一気に読ませてくれました。
放射線に関わる描写などは、青少年向けということもありざっくりしています。(放射線の影響を受けないような谷が存在しうるのか等。)むしろテーマは戦争とか放射線云々よりも、狭い安全な世界に、外部からよく分からない人間がきて、生活が変化していく、その過程に目線が向けられているので、大人が読んでも違和感はないです。
邦訳もされており、映画化もされています。邦訳版は「死の影の谷間」というタイトルですが、原題のZ for Zachariah(ザカリアのゼット)には深い意味があるので、是非そのタイトルの理由を小説の中で見つけてほしいです。
コメント