世界的ベストセラーのWhere The Crawdads Sing、日本でも『ザリガニの鳴くところ』という邦題で出版されていますが、これほど原語(英語)で読んでよかったなあと思える一冊今までなかったなと思います。英語を勉強中の方は是非、英語で読んでみて欲しいです。
それほど英語は難しくないですが、最初、主人公家族や町の人が使う方言?に苦戦するかもしれません。方言は辞書にも乗っていないので、もしかしてこの単語の省略形かな?と推測して読んでいくことになるのですが、文字の並びではなく「音」で判別するようにするとあっさり分かります。
映画化もされていますが、できれば書籍で先に読んでほしい。(私は映画は未視聴ですが)物語の舞台となる湿原の美しい情景が、英語を通して脳裏に浮かびあがってくる体験を、是非皆さんにも体感して欲しいです。第二言語は母語と違ってどうしても文章を機械的に捉えがちですが、感性でもって物語を飲み込む感覚がこの本にはあります。
なんでも著者は動物学者とのこと。今までにいくつかノンフィクションの本を出版されていますが、この本は小説としてはデビュー作になるそう。美しい沼地の描写は動物学者のならではの筆力の賜物なのだろうと思います。
沼地で一人生き抜くKyaの生涯が語られる本作、殺人事件が起こりその容疑者としてKyaが浮かび上がることで、大きく物語は動いていくのですが、私は読みながらこの殺人事件はあくまで物語の添え物で、著者が書きたかったのは孤独や差別、そして愛の姿なんだろうなと思いました。殺人事件自体はそれがメインのスリラーやミステリーに比べると、深堀りされていないところからも、著者の目的は別のところにあったんだろうなと思います。
要所要所で詩が登場するのですが、それが殺人事件とは対比するように物語の叙情的な要素を高めています。最後の最後に詩の秘密が分かった時には、登場人物と一緒に膝から崩れ落ちるような感覚を覚えました。真相はそうじゃないかと薄々思っていたけれど、そういう形で明らかになるとは思わなかった…。
すごく面白い一冊でした。是非、皆さんも手に取ってみてください。
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