読書レビュー:働く大人のための「学び」の教科書 /中原 淳
読んでよかった度 ★★★★☆
手元に置きたい度 ★★★★☆
分かりやすい度 ★★★★☆
読了にかかる時間 ★★☆☆☆
本の概要 どんな人におすすめ?
この本は企業・組織で働くホワイトカラーの方々が、働きながらいかに学ぶことができるか、に関するヒントを論じた本です。
主にホワイトカラーの30代以上の読者が読むことを想定して書かれていますが、手に取るのに20代でも早すぎるということはないです。むしろ「働きながら学ぶ」ことに興味があるのなら、どの年代の方にもおススメできる一冊です。
人生100年時代の到来とともに伸びる、働く期間
人生100年時代の到来といわれるようになった今日この頃。
長寿社会の到来により私たちの「働く期間」はおのずと長くなります。
そして、インターネットなどの発達により情報の流通や技術の進歩が著しい今、一昔前のように一度大人になったらもう学ばなくていい、というのは過去の話になってきました。
これからは大人になってからも勉強をして自分自身をアップデートしていかないと、時代の変化に取り残され、いつの間にやら次の時代の子供たちと同レベルの立ち位置となってしまい、「大人」のままではいられない、というのが著者の主張です。
プログラミングや英語が小学生の必須科目になるといわれています。その子供たちが大人になったとき、果たして私たちは「大人」の顔をして、彼らの前で仕事をしていられるのでしょうか?
スキルと経験に基づく能力は年齢と共に増加するという話もありますが、デジタル化によって社会は変化の加速度を上げています。昔ながらの仕事のスタイルも変化を余儀なくされており、昭和の時代には必須とされた「飲ミニケーション」が働き方改革で価値を見失ってきているのも、価値観の変化や仕事における重点の変化からきているものなのではないではないでしょうか。
社会人は学びを終えた人?
日本において、社会人といえば「学びを終えた人」というニュアンスが付きまといます。
ですから例えば社会人の友人がが勉強しているといえば、「社会人にもなって勉強しているの、すごいね」という言葉を掛けるのではないでしょうか。またもしかしたら、逆に「意識高い系」として陰で揶揄されてしまうかもしれません。
大人になってから学んでいるということはどことなく「大っぴらに言うことではない」という雰囲気があり、周りには言わずひっそりと学んでいる人も多いと思います。私も、最初の資格勉強をしているときは、私自身合格するまで勉強していることを上司や友達に言うことはなかったです。
それくらい社会人の学びに対して、日本では馴染みが薄いののが現状ですが、しかしそれは海外から見ると特異であると著者は述べています。日本の大学のメインの学生は浪人をしなければ18歳から22歳がメインです。社会人も入学可能ですが、全体的に年齢を重ねてから入学する人はやはり少数派です。しかし、アメリカの大学生の年齢は多様ですし、大学院ともなればさらに年齢の幅が広がります。
海外では「学び終える」ということはなく、キャリアアップやキャリアチェンジ、そして将来の条件をより良くするために、常に自分をアップデートするために「学ぶ」ことと付き合っていくことが当たり前になっているのです。
終身雇用時代の終焉
一昔前の日本では、いったん会社に入ってしまえば右肩上がりで給与が上がり、転職をせず、一生一つの会社で滅私奉公することが当たり前でした。そのような環境では学びなおしたり、変化を求めて新しい場所に飛び出すことは必要なかったのかもしれません。
しかしこれからは(いやもうすでに)時代は変わっていきます。
トヨタの豊田社長が言及したように、日本における終身雇用制はもう維持できなくなるでしょう。
これからは今仕事が安定しているからと言って、学びをやめてしまっては将来、生き抜いていけなくなるという危機感を持つことが大切だと私は思います。
本書では今まで日本社会の中であまり触れられてこなかった、「働く大人の学び方」について体系立てて紹介しています。巻末には働きながら学ぶことで人生を変えていった方々の「履歴」と解説が載っており、より具体的に「学び」へのイメージを膨らませられるようになっています。
社会人となって、もう一度学びなおすことに興味がある方に、そして時代の変化に「何かしなきゃ」と漠然とした不安をお持ちの方に、本書は指針となるのではないかと思います。