2億円と専業主婦 / 橘 玲 著
読んでよかった度 ★★★★★
手元に置きたい度 ★★★★☆
分かりやすい度 ★★★★☆
読了にかかる時間 ★★☆☆☆
こんにちは、missyです。
私は自分がキャリアについて見つめなおしている時期ということもあり、最近女性の働き方にとても興味があるのですが、働き方を考える上で避けて通れないのが「専業主婦」のことだと思っています。
私は二十歳で就職してから、紆余曲折ありつつも仕事を辞めることなくここまで来ました。仕事がつらい時期、妊娠が分かった時、専業主婦になることを考えたことも何度かあります。その度になんとか踏みとどまり、今も継続して働いています。”やりがい”があるかと聞かれると疑問ですが、少なくとも今日のご飯に困らないだけの収入減を確保できているという意味では辞めなくてよかった、というのが現在の気持ちですし、今仕事をお持ちの女性の方には是非とも「仕事を続けること」を諦めないでほしいという気持ちを持っています。
(もちろん、体調や諸般の事情で続けたくても続けられない方もいると思うので、何がなんでも頑張れとは思いません)
今日はそんな私が最近読んで、これは色んな女性に読んでほしいと思った本、「2億円と専業主婦」をご紹介したいと思います。
専業主婦は実は3億円損をする
「2億円と専業主婦」は著者の橘さんが2年前に出版した本「専業主婦は2億円損をする」のリニューアル新版です。
実は旧著「専業主婦は2億円損をする」は社会的に論争を巻き起こす、所謂「炎上」を引き起こしました。センセーショナルなタイトルから、専業主婦と思しき方(しかもおそらく本を読んでいない)からの批判の的になったそうです。
その批判の大半は「女がそんなに稼げるわけがない」と「好きで専業主婦をやっているわけではない」というものだったそう。日本では「専業主婦=勝ち組」と考えられてきたので、橘さんの本は専業主婦の皆様のアイデンティティを大きく揺らがすものだったわけです。
実は専業主婦は本当は3億円損しているそうです。2億というのは旧作を出版する際に、1億円”まけた”そうです。この辺りは本の中で詳しく統計と共に説明されていますので、本でご覧ください。
私は前作は手に取っていませんが、「2億円と専業主婦」を読んでみて、専業主婦の方を煽るような内容というよりは世の中の女性が就職や結婚、出産というライフステージの変化に直面する前に知っておいたほうがいいことについて書かれています。
また専業主婦は男性パートナーの問題でもあります。パートナーの女性が働かないことで2億円損をするのは、妻だけではなく夫も同じ。ですので女性だけでなく、パートナーとも一緒に読むとより、働くことや二人の幸せの形づくりに役立つと感じました。
お金と幸福
お金の問題は、人の幸福度と密接につながっています。
本書の中で著者は、幸福とは社会資本からやってくると説き、幸せとはどういう土台があって感じられるものなのかについて理論的に語られています。
幸せな状態ってどういう状態を言うのでしょうか?
幸福とは「自己決定権がある状態」すなわち、自分が好きなように生きられる状態です。
しかし、好きなように生きられる人はごくわずかしかいません。なぜならみんなが好きなように生きていたら、社会が混乱するからです。社会を混乱させないためにみんなが空気を読むようになるわけですが、しかしそれでも「どうしてもゆずれない」という場面が出てきます。その「ゆずれないもの」を譲らなくてはならなくなったとき、幸福度は大きく下がります。それを考えると幸福とは「イヤなことを断れること」ということができると著者は言います。
人はなぜイヤなことを断れないのか、それはそうしなければ生きていけないからです。
「イヤなこと」を上司にするように言われ、「断ったらクビだよ」と言われて「わかりました辞めます」といえる人はなかなかいません。ではこの場合「じゃあ辞めます」といえる人はどんな人なのか。
それはクビになっても生きていくのに困らない人です。
会社に依存しなくても自分の力で生きていけるとわかっている人はイヤなことをきっぱりと断ることができます。つまり、何かに依存しなければ生きていけない人ほどイヤなことを我慢しなくてはいけません。
幸福とは自己決定権があること、そのためには経済的に自立していないといけないというのは今や世界の常識となっており、経済的独立を自分から捨てて夫に依存しまう専業主婦は、最も幸せから遠い生き方だというのが著者の主張です。
世の中が間違っていることを前提に戦略を作る
本書では、仕事の選び方や婚活のしかた、そして21世紀の家庭のロールモデルなどについても触れられています。
仕事を選ぶうえで重要なのは「やりがい」なのか「安定」なのか、これからのAI時代に稼げるのはどんな職業なのか、また子育てと仕事のはざまで板挟みになりがちな出産後の女性に対するアドバイスもあり、女性の一生、そして幸せを考える上で非常に参考になる本だったと思います。
驚いたのは、著者が男性で、お子さんが中学生になるころに離婚をされ父子家庭で子育てをされてきた方だということ。(私てっきりお名前から女性なのかと思っていました(笑))
エピローグでなぜこの本を書こうと思ったのかついて、一つのエピソードを紹介されているのですが、色々と考えさせられました。
できない理由をいくら積み上げても問題は解決しないし、状況は改善しない。
世の中が間違っていることを前提に、どうすれば自分と家族が幸せになるのかの戦略を作る必要がある。 (2億円と専業主婦より抜粋)
まさに、その通りだと感じます。